せめてBダッシュにして欲しかった (ピンポーン) ぼく01「友、入るぞ」 (ガチャ) <『春の向日葵』フェードイン> 「・・・・・又増えてるでやんの。コード」(バタン) (トコトコトコ) <BGM 音量全開> 玖渚01「るんるるーん!いーちゃんいらっしゃーい!!ぱんぱかぱーん、凄いね凄いね何と僕様ちゃんが今丁度起きた所にいーちゃんからのチャイムが!奇跡だよ!!僕様ちゃんは表へ出て叫びだしたい位の奇跡だね素晴らしいよ!しないけどね!」 ぼく02「冗談でも、止めてくれ…」 玖渚の目の前に手を差し出して止めたら、玖渚がその手に興味を持ったのかまじまじと覗きこんだ。 玖渚02「おりょ。いーちゃん未だ治ってにゃーんだ。かっくいーねギプス」 ぼく03「傷は男の勲章だからな」 玖渚03「ギプスはそう言う点では格好悪い傷だと思うけどねん」 ぼく04 格好悪いのか格好良いのかはっきりして欲しかった。 「適当に座っちゃうぞ、友」 玖渚04「ういうい。コードに注意してね、一部剥き出しだから感電しちゃうのだ」 ぼく05「この部屋は何の罠だ?……って未だ見てんのギプス。つまんないもん見てるなよ」 「……」 ぼく06「玖渚さん?」 「……」 ぼく07「くなぎー?くなぎ犬?とーもー?フレンド?」 玖渚05「……これ、マシンガン仕込めそうだよね」 ぼく08「仕込めねーよ!真剣な顔で怖い事言うな!」 玖渚06「そうかな?ちょっと無骨になるけど、このギプスは棄てて僕様ちゃんが新しいギプス、作ってあげるよ」 ぼく09「いらない。ほんっといらない。僕の事は構うな満面の笑みで言うな手を引っ張るな、あ、そう言えば今日病院の日だ行かなきゃー」 哀川01「おーいおいおい病院何てつまんない所行くなよ。改造した方が面白いって」 ぼく10「ぼくはちっとも面白くありませんて………って哀川さん!?何でここに?っつーか何してんですかアンタ!!」 哀川02「見りゃ分かるだろ。ベランダ攀じ登ってる」 ぼく11「見てもそれがぼくの常識の範疇に無い場合分かりません。常識では人間はこの巨大マンション最上階に上って来れないと判断します」 哀川03「おいおい。折角人がベランダ攀じ登ってるのにお前が差し伸べるのは手じゃなくて暴言なのか?」 ぼく12「っていうかエレベーター使えよ!そもそも哀川さんはぼくの手何か必要無いでしょう」 哀川04「常識的に考えれば高い所にぶら下がって上ろうとしている人間には手を差し伸べるべきだとあたしは思う。それが例え誰であろうと――っと(スタン)ちゃーおー玖渚ちんといーたん」 玖渚07「はろろーん潤ちゃーん」 ぼく13「上ってきちゃったよ本当に…。玄関から入って下さいよ、不法侵入者ですよそれじゃ」 哀川05「今日はベランダにぶら下がりたい気分だったんだ」 ぼく14「アンタ屋上で愛を叫び出したい気分な中学生と同レベルかよ!」 哀川06「ふふん。だがお前はあたしがベランダにぶら下がりたい気分なのと似た様に、あたしに土下座したい気分じゃないのか?ん?」 ぼく15「は?何言って――」 <春の向日葵 急にフェードアウト> <『危険なアイツ』> 哀川07「おーいおいおい。どさくさに紛れて二回も私を苗字で呼んだんだ。土下座しといたほーがいーんじゃねーの?あー玖渚ちゃーん、いーたんちっと借りるぜ」 玖渚08「おっけーい。ほどほどにね」 哀川08「応よ」 ぼく16「な、何ですか。何引き摺ってるんですか僕を。そっちベランダ何ですけど」 哀川09「お前は一回ここから落ちろ」 ぼく17「僕は哀川さんみたいにベランダから落ちたい気分じゃありませんので…」 哀川10「仏の顔も三度までだ。死ね」 ぼく18「すいません潤さん土下座でも何でもしますから簡便して下さい」 玖渚09「潤ちゃーん。そっから落としたら幾らいーちゃんでも死んじゃう気がしなくもなくなくなくなくなく無いと思うけど」 哀川11「仕方ない、私の広い心に感謝しろ」 広い心の人はこんな事しないと思った。 </危険な姉貴> <今日も始まりイイ気分> ぼく19「有難う御座いますこの恩義戯言遣い一生忘れません」 哀川12「よし。じゃあやるか」 ぼく21「は?」 哀川13「いや、その手ロケットミサイルとかマシンガンとかにするんだろ?」 ぼく22「しませんから」 哀川14「お前何でもするって言ったよな」 ぼく23「言ってませんから」 玖渚10「言ったんだよいーちゃん。潤ちゃーんスタート!」 <再生>ぼく19「すいません潤さん土下座でも何でもしますから簡便して下さい」 哀川15「…ってな感じかな」 ぼく24「潤さん…そんな無駄な声真似しないで…。土下座するって言っただけじゃないですか?」 哀川16「何でもしますからって言ってるじゃん」 ぼく25「……マシンガンつけて良い何て言ってません」 哀川17「何だお前。約束は守らなくっちゃなあ」 ぼく26 哀川さんがチラリとベランダを見た。今度こそ本気らしく、目茶目茶怖い。 「……アディオス!」 玖渚11「あ!逃げたいーちゃん!」 哀川18「おいこのあたしから逃げられると――」 玖渚12「いやちょっと待って潤ちゃん」 (バチバチバチバチ)(感電) <無音> ぼく27「ぐがぁぁぁぁぁ!!」 </無音> < 続き> 玖渚13「足元見て走んないからだよ、いーちゃん……僕様ちゃん言ったじゃん」 玖渚04<再生>「コードに注意してね、一部剥き出しだから感電しちゃうのだ」 ぼく28「うるさい、忘れたん、だ…」 哀川19「なあ、コイツマシンガンより記憶装置つけた方が良くねえ?」 <機械音> ぼく29 その後の記憶は、笑う哀川さんの声と、何だか良く分からない機械音だけだった。 哀川20「なあなあ、胸がパカッて開いてロケット出てきたらカッコイクナイ?イクナイ?」 玖渚14「僕様ちゃんにおまかせ〜うふふふふふふふふふふふふふ」 <無音> ぼく30 ぼくは意識を手放した。 <新しい朝> 哀川21「はおういーたん」 ぼく31「え、あ、あれ!?」 哀川22「なーんかうなされてたぜ?」 ぼく32「じゃ、じゃあ、あれ、夢?」 哀川23「あれって?どれ?」 ぼく33「玖渚がギプスをマシンガンでどうとか……あ、あれ」 哀川24「何いってんの?手、見てみ?」 ぼく34 目が覚めたぼくに残されたのは、何か銀色の体と、痛まなくなった骨折箇所と――哀川さんの邪悪な微笑み。 ぼく35 それから、メタリック加工されたギプスにある玖渚の落書きだった。 <無音> 『Aのボタンで火が吹きます』 |