御実弾(ゴジツダン) ぼく01「今日は、潤さん」 哀川01「おう、仕事、元気にやってるよーだな。お前の噂は遠いようで近くから聞きまくってる」 ぼく02「ストーカーみたいな事言わないで下さいよ。怖いから」 哀川02「うひひ。で、今日は何で電話してきたんだ?って言うか仕事中だからノイズ酷いけど、簡便な」 ぼく03「…いえ、ただちょっと気になっただけですから。仕事中ってなら切りますけど」 哀川03「あー平気平気。切らなくていいよ。仕事っても後片付け中だから……で?」 ぼく04「いや、真心元気にしてるかなーって」 哀川04「おう。元気らしいぞ。小唄から最後に連絡来たのは三日前のかな。脱走したって」 ぼく05「いやちょっと待って下さい。脱走って…!?若しかして若しかしなくても小唄さんが何かしたんですか、いやっていうか絶対あの人何かしてますよね、一体何したんですか!?」 哀川05「詳しくは知らないけど聞いた話によると地上6階からプールに向かって落っこちたりしたそうだ」 ぼく06「落っことされたの間違いでしょう。つーか真心以外だったら確実に死んでますよ、それ」 哀川06「そして他にも色々」 ぼく07「不憫だ…真心が超不憫だ…… (ザッ!)(でかいノイズ音) ぼく07 ……あれ、哀川さん、聞こえてます?おーい」 (ザー) 哀川07「ノイズが入るとお前は苗字で呼ぶんだな。聞こえてんだよあぁん?」 ぼく08「あー電波が悪くて聞こえませんので切りますね。じゃ」(ぼくの所にはノイズ入らず) (ザー) 哀川08「あ、オイコラ!テメ、ふざけん」 (ブツ ツー、ツー、ツー・・・) ぼく09 ちょっと愉快。 <散歩道> ぼく10 さて、哀川さんの電話が終わった後、夕飯を如何しようかなとつらつらと考えていた。今日は仕事は入っていない。 「外食にすっかな…」 <ガシャン>(硝子が割れる) 真心01「いーちゃーん!!」 ぼく11「扉を壊して入ってこないで…って真心!?」 真心02「いーちゃん、いーちゃんだあ。うわあん、会いたかったぞいーちゃん!」 ぼく12「いや、分かったから…分かったからちょっと待て。あまりくっつくな」 隣の部屋には"アイツ"が居るんだけどな。この騒動、耳に入ってないのだろうか、部屋からは出てこないが。 が、そんな事気にせず、軽く錯乱している真心が髪を振り乱して詰め寄ってくる。 真心03「酷え!いーちゃんまで…っ」 ぼく13「落ち着け真心!一体何が……あ」 よくよく考えてみれば真心が怯える理由は一つしかない。 哀川さんが真心を預けた、例の麗しき女泥棒さんである。 すると、矢張り真心は思った通りの反応で怯えた。 真心04「何!?あああ、あのおんな…小唄さんか!?追ってきたのか!?」 ぼく14「いや、来てないから落ち着けって」 真心05「だって、いーちゃん!俺…違いますごめんなさいごめんなさい、ま、間違えました、え、えっと、ぼ、ぼぼぼ僕ちゃん、僕ちゃん!僕ちゃん本当、し、死ぬかとお、おも、思ったんだぞ!?」 真心、絵本さん化。 ぼく15「っていうか真心…僕ちゃんって…」 真心06「だだだだってぼ、僕ちゃんって言わないと、こ、小唄、さんが」 ぼく16「真心…もういい…分かったから…。俺様って言ってくれ……」 超不憫過ぎだった。 真心07「う…。いーちゃんはいい奴だな…。それに比べてあの女――」 <ボリューム下げる> 〜回想〜 小唄01『初めまして、私石丸小唄と申します。貴方、お名前は?』 真心08『おう!俺様は想影まごこ…』 (バスン!) 小唄02『あら、いけませんわね。俺様何てはしたないですわ。私の下で働く限りは、私の美学に合わせて頂きます』 〜回想終了〜 <ボリュームあげる> 真心09「――って初対面で回し蹴り食らわせてきたんだぞ!?」 ぼく17「御免、怖すぎ」 真心10「その他、先ず、仕事でドジ踏んだら一時間ビルの屋上から逆さ釣りだろ、若しくは笑顔で閉じ込められたり、それからそれから」 ぼく18「そんな事までしてたのかあの人……」 真心がどうやったらドジを踏めるのかとか真心をどうやって脱出されないよう室内に閉じ込めたのかとか、あえて訊くまい。怖いから。 真心11「あうう、本当、あの女激怖――」 (ビュゥ…)(風) <BGM切る> (カツンカツンカツン)(歩く音) 小唄03「あら、他の方はともかく、わたくしの事を"あの女"などと称してはいけないと言ったでしょう?真心」 ぼく19 と、その瞬間だった。真心が壊した玄関から、颯爽と彼女が現れたのは。 デニムのパンツにハンチング帽、ジャケットと編み上げ靴がやけに格好良い。そんな彼女こと、石丸小唄はやって来た。 固まる真心の横を擦り抜け、僕の目の前にやって来る。 <散歩道 続き> 小唄04「ごきげんよう、ディアフレンド。真心がお世話に成りましたわね」 ぼく20「こ、今日は。小唄さん」 真心12「こ、こ、こう、小唄、さ」 小唄05「こんな所に来ていたとは。北海道でのお仕事ですのに、よくもまあ京都まで来た物ですわ、真心。あちこち荒らしてわたくしの目の免れようとしたらしいですけれど、そんな物無意味だと分かってましたでしょう?」 真心13「だ、だって、あの、その、その」 小唄06「だっても何もありませんわ。言い訳は見苦しいとわたくし何度言った事かしら。 全く、躾とは大変な物ですわ」 ぼく21「…躾にしてはちょっとやり過ぎじゃありませんか?」 庇ってみた。 小唄07「真心に何を訊いたのかは知りませんが、人類最終に手の平で叩いて教えようと思ったら、あの位はしなくては意味が無いと言う事です。お分かり頂けるでしょう?ディアフレンド」 ぼく23 諭された。 「そうかもしれませんが」 納得してしまった。 いや、それにしてもやり過ぎだとは思うが、この小唄さんを前にぼくは何も言えなかったのだ。 小唄08「それでは、久しぶりの再会ではありますが、仕事が未だ残っていますので真心を連れ帰らせて頂きますわ。よろしいですわね?」 ぼく24「ど、どうぞ。お好きな様に」 真心14「いーちゃん!?」 ぼく25 すまん。真心。 小唄09「次の再会を祈っておりますわ。行きましょう、真心」 (<シュバッ)(飛び去る) 真心15「助けてい゛〜ぢゃん゛〜!!」 <BGM 切る> ぼく26「嵐の様だったな…………おっと。六時半。夕飯夕飯ーと」 まるで今までの出来事が無かったように振舞って、廊下を渡り隣の部屋へ。 (ギシギシギシ)(廊下を歩く) (コンコン) ぼく27「入るぞ」 (ガチャ) 玖渚01「ん…あ……いーちゃん……おはよう」 ぼく28「寝てたのか?」 玖渚02「みたい。本読んでたら、眠くなっちゃって……」 ぼく29「腹、減ったろ。夕食にしようぜ」 玖渚03「うん」 ぼく30「外食でいいよな?」 玖渚04「お任せするよ」 ぼく31「じゃ、何処にすっかな…。こないだ仕事で入った、イタリアンの店が美味しかったかな」 玖渚05「へえ、楽しみだなー。あ、仕度するから玄関で待ってて」 ぼく32「おっけー」 |